苺といえばスーパーで見かけるパック入りのものを思い浮かべる方が多いですが、実は「露地栽培」で育てられた苺には、自然の力を活かした深い味わいや香りがあります。この記事では、そんな露地栽培の苺に注目し、ハウス栽培との違いや、家庭でも育てられる方法について詳しく解説していきます。
露地栽培の苺とは?ハウス栽培との違いを比較

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苺がどのような環境で育つかによって、味や香り、生育の安定性は大きく変わります。ここでは、自然の力に任せた露地栽培と、環境を管理できるハウス栽培の特徴を比較し、それぞれの魅力や課題を詳しく見ていきましょう。
露地栽培とハウス栽培の基本的な違いとは
露地栽培とは、ビニールハウスなどの人工的な設備を使わず、太陽や雨、風といった自然の力を活用して作物を育てる伝統的な栽培方法です。地面に直接植えられた苺は、自然環境に順応しながら育つため、四季の移ろいを反映した味わいになることが特徴です。また、地域の気候や土壌の性質がそのまま苺の出来に影響を与えるため、地元ならではの風味が楽しめるという利点もあります。
一方、ハウス栽培では、ビニールやガラスで覆った施設内で温度、湿度、光量、水分などを細かくコントロールすることができます。そのため、外の天候や季節に左右されず、一年を通して安定した品質と収穫量を維持することが可能です。近年では技術の進化により、高糖度の品種を計画的に育てることも容易になってきました。
天候が苺の味に与える影響
露地栽培では、天候が苺の味に大きな影響を与えます。晴天が続くと光合成が促進され、果実に糖分が蓄えられて甘くなります。特に昼夜の寒暖差が大きい環境では、日中の光合成と夜間の呼吸活動のバランスが取れ、甘味と酸味のバランスが整った濃厚な味わいの苺が育ちます。
一方で、曇りや雨が続くと日照不足によって糖度が下がり、風味がぼやける傾向があります。また、雨が多いと果実が水分を多く含みやすくなり、味が薄く感じられることも。湿度が高まることで病害が発生しやすくなるなどのリスクもあります。
このように、天候によって苺の品質が左右されるため、露地栽培では気象状況を見ながら適切な管理を行うことが、質の高い苺を育てるためには不可欠です。
自然環境で育てるメリットとリスク
露地栽培の最大の魅力は、自然の力を活かして苺を育てることにあります。太陽光をたっぷりと浴び、土の栄養を吸収しながら成長する苺は、風味が豊かで香りも高く、まさに自然が生み出す美味しさそのものです。また、季節の移ろいを感じながら栽培することで、旬の味わいが楽しめるのも大きなメリットです。
しかし、自然環境に任せるということは、天候や気温の変化に左右されやすいというリスクも伴います。雨が多すぎると果実が傷みやすくなり、逆に日照不足が続くと甘みが足りない苺になることもあります。台風や霜などの自然災害によって収穫が大幅に減る可能性もあり、生産の安定性には課題があります。
このように、自然環境での栽培は美味しさを引き出す一方で、リスク管理やこまめな観察が求められる、経験と判断力が重要な方法でもあるのです。
栽培コストや手間の違い
露地栽培は、設備投資が少なく始められる点が魅力です。ビニールハウスや加温設備などが不要なため、初期費用を抑えることができます。また、自然のままの環境で育てるため、電気や水道代といったランニングコストも比較的低く抑えられます。
一方で、自然に任せる分、管理の手間は多くなります。天候によっては雑草や害虫が発生しやすく、日々の観察や対応が欠かせません。また、収穫時期が一斉になりがちで、短期間に多くの作業が集中するため、人手が必要になる場面もあります。
ハウス栽培は、環境をコントロールできるため生育は安定しますが、設備の設置・維持費がかかるほか、空調・灌水などに電力や水を使うため、運用コストが高くなる傾向があります。ただし、長期的に収穫可能なため、収益の見通しを立てやすいという利点もあります。
市場価格や流通における違い
露地栽培の苺は、旬の時期に合わせて出荷されるため、季節感のある商品として高い価値がつく傾向があります。市場では「その時期しか味わえない希少性」が評価され、品質が良ければ高値で取引されることもあります。ただし、収穫量が天候に左右されやすく、供給が不安定になる場合もあり、価格が変動しやすいという側面もあります。
一方、ハウス栽培の苺は、計画的に出荷時期をコントロールできるため、長期間安定して供給することが可能です。これにより流通業者や小売店にとっては扱いやすく、契約出荷などのビジネスモデルにも適しています。価格は比較的安定しているものの、露地物に比べて希少性が低いため、プレミアムな価格はつきにくい傾向があります。
また、露地苺は収穫後の鮮度保持が難しいため、地産地消型の流通が中心になります。これに対し、ハウス栽培は安定供給と流通の効率性から、広域への展開もしやすいという特徴があります。
露地栽培の苺が美味しい理由と味の特徴

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露地栽培の苺には、自然の環境で育てられたからこそ得られる独特の甘さや風味があります。ここでは、その美味しさの理由を具体的に掘り下げてご紹介します。
太陽の光をたっぷり浴びた甘み
露地栽培では、ハウスのような遮光資材がないため、苺は太陽の光を一日中たっぷりと浴びることができます。この自然光によって光合成が活発になり、果実の中に糖分がしっかりと蓄えられます。特に、晴天が多く寒暖差の大きい日が続くと、苺は甘みを増し、濃厚な味わいになります。また、直射日光のもとで育つことで表面の色づきも良くなり、見た目にも鮮やかな赤い苺に仕上がります。太陽の恵みをそのまま受けて育った苺は、まさに自然が生んだ贈り物と言えるでしょう。
土壌の栄養を吸収して育つ力強さ
露地栽培のもう一つの大きな特徴は、土壌から直接栄養を吸収して育つという点です。苺の根は土の中で伸び、土壌中の有機物や微量元素、水分を取り込みながら成長します。特に、堆肥や腐葉土をたっぷりと含んだ土壌では、苺にとって必要なミネラルや栄養素が豊富に供給されるため、果実に自然な甘さやコクが生まれやすくなります。
また、露地栽培では土の温度変化や湿度、微生物の活動などが苺の根に直接作用するため、根の発達がより自然に促され、結果として丈夫で風味豊かな果実が育ちます。土の状態や管理によって苺の品質は大きく左右されるため、露地栽培では「土づくり」が非常に重要です。農家によっては長年かけて土壌を改良し、その土地特有の味を引き出すことにこだわる場合もあります。このように、露地の土壌の力をしっかりと受けて育つ苺は、生命力にあふれ、噛むほどに深い味わいが広がるのが魅力です。
品種によって変わる風味の個性
苺には数多くの品種があり、それぞれに異なる風味や食感、香りがあります。露地栽培では自然条件がそのまま反映されやすいため、品種ごとの特徴がより際立ちやすくなります。
以下の表は、代表的な苺の品種とその特徴をわかりやすくまとめたものです:
品種名 | 味の特徴 | 食感 | その他の特徴 |
---|---|---|---|
とちおとめ | 甘みと酸味のバランスが良い | しっかり | 果肉が固めで流通に向く |
あまおう | 非常に甘く濃厚 | ジューシー | 大粒で見た目も華やか |
紅ほっぺ | 香り高くコクがある | なめらか | スイーツにも適している |
章姫 | 酸味控えめで甘い | 柔らかい | 初心者向けで育てやすい |
宝交早生 | 昔ながらの素朴な甘さ | 軟らかい | 寒さに強く家庭菜園に適している |
露地栽培では、それぞれの品種が持つ本来の力を自然環境の中で引き出すことができ、同じ品種でも育てる地域や土壌、気候によって風味に個性が生まれます。これこそが、露地栽培ならではの「一期一会」の美味しさといえるでしょう。
香りの違いも味わいに影響
苺の香りは、味の印象に大きく影響を与える重要な要素です。露地栽培では、日光や風、土壌など自然条件の影響を強く受けるため、品種本来の香りが際立ちやすくなります。気温や湿度が適度な環境下では、苺の芳香成分である「リナロール」や「フラネオール」といった揮発性化合物が豊富に生成され、甘く華やかな香りを放ちます。
また、香りは糖度や酸味とのバランスにより味の感じ方を左右します。たとえば、香りが高い苺は実際の糖度以上に甘く感じられることがあり、視覚や触感とあわせて五感で味わう楽しさを提供してくれます。香りが豊かな苺はそのまま食べるだけでなく、ジャムやスイーツに加工しても風味が生き、より満足感の高い一品に仕上がります。
露地栽培によって育まれる自然な香りは、苺本来の味を一層引き立て、食べた瞬間の感動を演出してくれる重要な魅力なのです。
栽培時期と収穫のタイミング|旬を楽しむコツ

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苺を美味しく楽しむには、最適な栽培時期と収穫のタイミングを知ることが重要です。ここでは、露地栽培におけるスケジュールと、旬の苺を逃さないためのポイントを解説します。
苺の露地栽培はいつ始めるべき?
露地栽培の苺は、冬から春にかけて実をつけるため、植え付けの準備は前年の秋に始めるのが一般的です。具体的には、9月から10月ごろに苗を定植し、気温が下がる前にしっかりと根を張らせておくことが大切です。こうすることで、冬の寒さを乗り越え、春には元気な花を咲かせ、順調に実をつけることができます。
また、植え付け前には土づくりが非常に重要です。日当たりと水はけの良い場所を選び、堆肥や苦土石灰を使って土壌を中和し、ふかふかの状態にしておくと、苗がしっかりと活着しやすくなります。
タイミングよく準備を始めることで、春には甘くて香り豊かな露地栽培の苺を楽しむことができるのです。
地域ごとの気候差による収穫期の違い
日本は縦に長い地形をしており、地域によって気温や日照時間、霜の降りる時期などに大きな差があります。そのため、露地栽培の苺の収穫時期も地域ごとに異なります。
以下の表に、地域別の収穫時期の違いをまとめました。
地域 | 主な収穫時期 | 特徴 |
---|---|---|
九州・四国 | 3月〜4月 | 温暖な気候で早めの収穫が可能 |
関東・東海 | 4月〜5月 | 春本番に向けて収穫がピークに |
東北 | 5月〜6月 | 冷涼な気候でやや遅めの収穫 |
北海道 | 6月〜7月 | 最も遅い収穫期、夏に向けて旬を迎える |
このような地域差により、全国各地で異なるタイミングで旬の苺を楽しめるのが露地栽培ならではの魅力です。また、それぞれの土地の気候や風土に合った品種を選ぶことで、より高品質な苺の収穫が可能となります。
苺の花が咲いてから実がなるまでの流れ
苺は多年草ですが、実際に収穫されるのは花が咲いてから約1か月後が目安です。まず、春になると温暖な気候とともに苺の株から白い花が咲きます。この花が受粉することで、やがて果実が形成されていきます。自然界では昆虫や風によって受粉が行われることが多く、露地栽培ではミツバチなどの昆虫の活動が非常に重要になります。
受粉後、花の中心部がふくらみ始め、徐々に緑色の未熟な果実が形成されます。そこから気温が上がるにつれて果実は大きく成長し、色づき始めます。日光をたっぷりと浴びてゆっくりと熟していく過程で、苺の甘みや香りが引き出されていきます。
また、開花から収穫までの期間は気温によっても異なり、暖かい地域では短く、冷涼な地域ではやや長くなる傾向があります。栽培者は花の開花状況や気候の変化を観察しながら、最適な収穫時期を見極めることが求められます。
収穫適期を見極めるサインとは
苺を最も美味しい状態で収穫するためには、いくつかの目安となるサインを見逃さないことが大切です。
まず第一に注目すべきなのは「果実の色づき」です。苺はヘタの近くまで真っ赤に色づいているものが完熟のサインであり、部分的に白っぽさが残っているものはまだ熟しきっていない可能性があります。
次に「果実の張りとつや」も重要です。完熟した苺は表皮がつややかで、実がしっかりとふくらみ、指で軽く触れると弾力を感じます。また、果実の香りも収穫の目安になります。甘く芳醇な香りが強くなってきたら、食べ頃が近い証拠です。
さらに、「ヘタの立ち具合」もチェックポイントです。ヘタが立ち上がり、緑色が鮮やかな状態は果実の鮮度が高い証です。時間が経つとヘタがしおれてくるため、見た目でも収穫適期を判断できます。
これらの要素を総合的に観察することで、苺を最も美味しい状態で収穫することができ、味や香りのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。
おいしい苺を長く楽しむ保存方法
苺は非常にデリケートな果物であり、収穫後はできるだけ早く食べるのが理想ですが、適切な保存をすることで鮮度と美味しさをある程度保つことができます。
保存の基本は「低温・低湿・乾燥を避ける」こと。まず、購入したり収穫した苺は、洗わずに保存するのが鉄則です。水分がついたままだとカビが生えやすくなり、傷みが早まるからです。パックに入った苺はキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に移し、重ならないように1段に並べて冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
冷蔵保存では2〜3日以内に食べるのがベストですが、すぐに食べきれない場合は冷凍保存も可能です。冷凍する際は、へたを取って水分をしっかりふき取り、バットやトレーに並べて凍らせたあと、冷凍用の保存袋に入れて保存します。解凍後はやや食感が変わりますが、ジャムやスムージー、お菓子作りに最適です。
このように保存方法を工夫することで、苺の旬の味わいをより長く楽しむことができます。
家庭でできる苺の露地栽培|初心者におすすめの品種とは?

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「家庭でも露地栽培の苺を育ててみたい!」という方に向けて、準備や栽培の手順、おすすめの品種をわかりやすく紹介します。初心者でも楽しめるポイントをまとめました。
ベランダや庭でできる露地栽培の方法
家庭でも露地栽培の苺は十分に育てることが可能です。広い畑がなくても、ベランダのプランターや庭の一角を使って手軽に始めることができます。プランター栽培では、深さ20cm以上、横幅が広めの容器を選ぶと、根がしっかりと張ることができて健康な株に育ちます。
日当たりの良い場所を確保し、風通しも良いことが理想的です。苺は日照を好む植物なので、1日5時間以上は日が当たる場所を選びましょう。庭で育てる場合は、直植えでも構いませんが、雑草や害虫の管理をしやすくするためにマルチングシートを敷くのがおすすめです。
水やりは土の表面が乾いたらたっぷりと与えるのが基本です。ただし、水のやりすぎは根腐れの原因になるため、排水性の良い土や鉢底石などを活用して水はけを確保しましょう。
このように、ちょっとしたスペースと工夫で、家庭でも香り高く美味しい露地栽培の苺を育てることができます。
必要な土・肥料・道具とは
家庭で苺を露地栽培する際には、適切な土や肥料、基本的な道具の準備が成功のカギを握ります。まず、苺栽培に適した土は「水はけがよく、保水性もあるフカフカの土」です。市販の野菜用培養土でも構いませんが、赤玉土・腐葉土・バーミキュライトなどを混ぜて自作することも可能です。
肥料は元肥として有機質肥料(堆肥や油かす)を使い、定植前にしっかりとすき込みます。生育中は月に1回程度、化成肥料や液体肥料で追肥するのが一般的です。苺は肥料の効きすぎで葉ばかり茂る「つるぼけ」になりやすいので、控えめに与えることも重要です。
必要な道具としては、移植ごて、じょうろ、剪定ばさみ、マルチシート(雑草防止と保温用)、ネット(鳥害対策用)などがあると便利です。また、プランターで育てる場合は底石やスリット入りの鉢を用意し、排水性を確保しましょう。
これらの基本アイテムをそろえておくことで、初心者でもスムーズに苺栽培を始めることができます。
初心者でも失敗しにくいおすすめ品種
苺には多くの品種がありますが、初心者には「育てやすく、病気に強く、安定した収穫が見込める品種」が特におすすめです。
たとえば「章姫(あきひめ)」は、果実が長く柔らかで甘みが強く、育てやすい品種として知られています。病害にも比較的強く、家庭菜園でも失敗が少ないと評価されています。また、「宝交早生(ほうこうわせ)」も昔から家庭用に人気のある品種で、寒さに強く、甘みと酸味のバランスがよいのが特徴です。
さらに「とよのか」や「さちのか」なども初心者向きの品種として人気があります。とよのかは香りが良く、果実もしっかりしているため扱いやすいです。
これらの品種は苗の流通も多く、ホームセンターや園芸店で入手しやすいため、家庭での露地栽培にも適しています。
苗の選び方と植え付け時のポイント
良い苗を選ぶことは、苺栽培の成功に直結します。まず、苗を選ぶ際は「葉の色が濃く、しっかりとした厚みがあるか」を確認しましょう。葉に元気があり、株元が太くがっしりしている苗は、根もよく張っていて成長が安定します。
また、ランナー(つる)が短く、徒長していない苗が理想的です。徒長苗は環境に慣れにくく、植え付け後の活着が悪くなることがあります。
植え付け時期は、地域にもよりますが、9月下旬から10月中旬が適期です。苗を植える際には「クラウン(株元の中心部分)」が土に埋まりすぎないよう注意が必要です。クラウンが土に埋まってしまうと、腐敗の原因となることがあります。
株間は30cmほど空けて、風通しを良くし、病気の発生を防ぎます。植え付け後はたっぷりと水を与え、根がしっかりと活着するまでは乾燥に注意しましょう。マルチングや寒冷紗を活用すれば、雑草や寒さ対策にも効果的です。
害虫対策と病気予防の基本
家庭菜園でも露地栽培の苺は虫や病気の影響を受けやすいため、日頃からの予防と早期発見が大切です。
まず害虫対策として代表的なのが、アブラムシやハダニ、ナメクジなどです。アブラムシは新芽に群がり、吸汁によって生育を阻害するほか、ウイルス病を媒介する可能性もあるため注意が必要です。見つけ次第、牛乳スプレーや家庭用の防虫スプレーで早めに対処しましょう。
ハダニは乾燥時期に発生しやすく、葉の裏に集まって葉を白く変色させます。こまめに葉裏を確認し、発見次第水で洗い流すなどの対応が効果的です。ナメクジは夜間に活動し、果実をかじることがあるため、日中に隠れている場所を確認して駆除します。
病気では、うどんこ病や灰色かび病が多く見られます。これらは風通しが悪く、湿度が高い環境で発生しやすいため、適切な株間の確保やこまめな除草、過湿を避けた水やりが予防の基本です。発症が確認された葉や果実はすぐに取り除き、広がるのを防ぎます。
また、予防のために月に一度は植物性の殺菌剤や農薬の使用も検討するとよいでしょう。ただし、使用する際は必ず家庭園芸用のものを選び、使用量や時期を守るようにしてください。
苺の露地栽培のデメリットと対策方法も紹介

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自然環境を利用する露地栽培にはメリットだけでなく、いくつかの課題も存在します。ここでは、よくあるトラブルやリスクと、その対策について具体的に解説します。
雨や風による実へのダメージとは
露地栽培では自然の天候にさらされるため、特に雨や風による被害が避けられない場合があります。長雨が続くと果実が過剰に水分を吸収し、実割れや水っぽさ、味の低下を引き起こすことがあります。また、果実表面に水分がたまると病原菌が繁殖しやすくなり、灰色かび病などの発生リスクが高まります。
さらに、強風によって果実や葉が物理的に傷つくほか、株が倒れて茎や根が損傷することもあります。これは成長の妨げとなり、収穫量の減少につながることがあります。
対策としては、畝を高くして排水性を確保したり、マルチングを行って泥はねや過湿を防ぐ方法が効果的です。また、防風ネットや支柱を活用することで風の直撃を避けることができ、植物全体を安定させることができます。
このように、雨や風によるダメージは避けられない課題ですが、事前の備えやこまめな管理によって、被害を最小限に抑えることが可能です。
害虫・鳥の被害を防ぐためにできること
露地栽培では、自然環境に開かれているため、虫や鳥など外敵からの被害にも注意が必要です。苺は甘くて香りが強いため、昆虫や野鳥にとっても魅力的な存在です。
虫に関しては、アブラムシやハダニ、ナメクジ、ヨトウムシなどが代表的な害虫です。定期的な葉の裏のチェックや、早朝・夕方に土の表面を観察することで早期発見が可能です。対策としては、防虫ネットを設置する、自然由来の忌避剤を使用する、コンパニオンプランツ(例:ニンニクやマリーゴールド)を植えて害虫を遠ざけるなどの方法が有効です。
鳥害も深刻で、ヒヨドリやムクドリなどが苺をついばむことがあります。特に実が赤く色づいてくると狙われやすいため、防鳥ネットで全体を覆うのが有効です。テグスやCDを使って光や音で鳥を遠ざける工夫もあります。
いずれの対策も完全に被害を防ぐことは難しいものの、日常的な観察と早めの対応、物理的な防護措置を組み合わせることで、大きな被害を避けることが可能になります。
土壌病害や連作障害への対処法
露地栽培では、同じ場所で苺を何年も続けて栽培すると「連作障害」が起きやすくなります。これは、同じ作物を育て続けることで特定の栄養素が偏って消費されたり、土中の微生物バランスが崩れて病害虫が発生しやすくなったりする現象です。
特に苺は「炭疽病」や「萎黄病」といった土壌由来の病気にかかりやすく、感染すると株全体が枯れてしまうこともあります。こうした病害を防ぐためには、同じ場所での連作を避け、2~3年は別の作物(輪作)を育てるのが基本です。
また、土壌の消毒や太陽熱処理(黒マルチをかけて土を加熱消毒)なども有効な対策です。完熟堆肥や石灰を使って土壌改良を行い、微生物のバランスを整えることで、病害に強い健全な土づくりが可能になります。
育てる前の段階からしっかりと土壌環境を整えることが、苺の健康な生育と長期的な収穫につながります。
リスクを減らすための栽培スケジュール
露地栽培では、天候や病害虫などの外的要因によって予期せぬトラブルが発生しやすいため、事前にスケジュールを立てて栽培作業を計画的に進めることが非常に重要です。
まず、準備段階として夏の終わりから秋にかけて(8月下旬〜10月初旬)には、土づくりと苗の購入・定植を行います。定植前には必ず土壌改良やpH調整を行い、健康な環境を整えておく必要があります。
その後、11月から翌年3月までは冬越し期間にあたります。寒冷地では霜や凍結から守るためにマルチや防寒資材を使用し、株の保護に努めます。この時期は雑草や病害虫の発生は比較的少ないものの、日々の観察と乾燥・過湿の管理が求められます。
春(3月〜5月)は生育と収穫の最盛期です。花芽の形成や受粉、果実の肥大が進むため、追肥や水やり、摘花などの管理作業が増えてきます。また、鳥や虫による被害も増えるため、ネットや忌避資材の準備もこの時期には欠かせません。
6月〜7月は株の整理や不要なランナーの剪定、次作への準備にあて、病気や連作障害の兆候がないかをチェックしておくとよいでしょう。
このように、季節ごとに必要な作業と管理をあらかじめスケジューリングしておくことで、突発的なリスクを最小限に抑え、安定した収穫と栽培の成功に繋げることができます。
苺を地植えし植えっぱなしにするとどうなる?知っておきたいリスクと対策

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家庭菜園で苺を育てていると、「一度植えた苗をそのままにしておいても毎年実がなるのでは?」と思う方も多いかもしれません。しかし、苺を地植えして“植えっぱなし”にしておくと、さまざまな問題が発生することがあります。ここでは、そのリスクや理由、適切な管理方法について詳しく解説します。
収穫量と果実の質が年々低下する
苺は多年草ですが、実は収穫に適した寿命は短く、1~2年目が最も実の付きがよく品質も安定しています。植えっぱなしにすると、3年目以降は株が老化し、次第に実の数が減ったり、果実が小さくなったりする傾向があります。特に栄養分の偏りや根詰まりが進行すると、果実の味も落ちてしまいます。
病害虫や連作障害のリスクが高まる
同じ場所に連続して苺を育てることで、土壌に特定の病原菌が蓄積し、「連作障害」が発生しやすくなります。これにより、炭疽病や萎黄病、灰色かび病などの発生率が高まり、株が急激に弱ることもあります。また、地中の害虫やナメクジなどの被害も受けやすくなります。
ランナーが暴走して管理が難しくなる
苺は夏になると「ランナー」と呼ばれるつるを伸ばして子株を増やします。植えっぱなしにしているとランナーがあちこちに広がり、畝や通路を覆ってしまうことがあります。放っておくと雑草と見分けがつかなくなるだけでなく、株同士の間隔が詰まって風通しが悪くなり、病気の原因にもなります。
土の栄養バランスが崩れやすい
同じ場所で長く苺を育てていると、特定の栄養素が土壌から消耗され、土のバランスが崩れてしまいます。肥料を追加しても吸収効率が落ちており、葉ばかりが茂って実がつかない「つるぼけ」状態になることも。
苺の露地栽培に追肥は必要?タイミングと与え方を解説

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苺の露地栽培は、自然の力を活かして育てる方法ですが、肥料の管理を怠ると実つきが悪くなったり、葉ばかり茂ってしまったりすることもあります。特に「追肥(ついひ)」は、栄養が不足しがちな成長期や結実期をサポートする重要な作業です。苺の露地栽培における追肥の必要性とそのコツについて詳しくご紹介します。
追肥は必要?その理由とは
露地栽培でも、追肥は「必要」です。というのも、苺は実を多くつける作物であり、その生育過程で大量の栄養を必要とします。植え付け時に元肥(もとごえ)を施していても、栽培中に栄養分が不足すると、以下のようなトラブルが発生します:
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実が小さい、数が少ない
-
甘さや香りが薄い
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葉ばかり茂って実がならない(つるぼけ)
-
病気への抵抗力が弱くなる
特に花が咲き始めてから実が熟すまでの間は、植物の栄養要求がピークを迎えるため、適切な追肥が必要になります。
追肥のタイミングと目安
苺の露地栽培での追肥は、以下の3つのタイミングが基本です:
タイミング | 目的 | 使用する肥料の例 |
---|---|---|
冬越し前(11月頃) | 株を健康に保ち、寒さに備える | 緩効性の化成肥料・有機肥料 |
花芽形成期(2〜3月) | 開花や結実の準備をサポート | 速効性の化成肥料・液体肥料 |
果実肥大期(4〜5月) | 実を大きく育て、甘みを引き出す | いちご専用肥料、リン酸やカリ多め |
※地域や気温によって前後する場合があります。
追肥はやりすぎると、葉が育ちすぎて実がつきにくくなることがあるため、「控えめ・こまめに」が鉄則です。特にチッソ分が多すぎると「つるぼけ」を招きやすいため注意しましょう。
追肥のやり方と注意点
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株元から少し離した位置にまく:肥料が直接根に触れると、根を傷める恐れがあります。株の周囲5〜10cmほど離れたところにまきましょう。
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水やり後や雨の前に施す:肥料を土にしっかり浸透させるため、水分のあるときに行うと吸収が良くなります。
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液体肥料は週1回、少量ずつ:特に果実がつく時期は液体肥料を使うと効果が早く現れます。濃度を守り、少なめに与えましょう。
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肥料の種類に注意:苺用に調整された専用肥料を使うと、バランス良く栄養を供給でき失敗が少なくなります。
まとめ|自然の恵みを感じる苺の露地栽培の魅力
露地栽培で育てた苺は、自然の力を最大限に活かすことで、他にはない風味や香り、力強さを備えた果実に育ちます。四季の変化や土壌の個性がダイレクトに反映されるため、まさに“その土地ならでは”の味を楽しむことができます。
一方で、天候や病害虫の影響を受けやすく、安定した収穫のためには観察力と経験が求められるという課題もあります。しかし、正しい知識と対策を持って取り組めば、家庭でもおいしい苺を育てることは十分可能です。
本記事では、以下のようなポイントについて詳しくご紹介してきました:
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露地栽培とハウス栽培の違いやそれぞれのメリット・デメリット
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太陽光や土壌によって育まれる露地栽培苺の美味しさの理由
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栽培時期や地域差を考慮した収穫のタイミングとコツ
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家庭菜園におすすめの品種や育て方のポイント
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雨風・害虫・連作障害といったリスクとその対策方法
自然との共生を実感できる露地栽培は、手間がかかる分だけ味わい深く、完成した果実には格別の喜びがあります。ぜひこの記事を参考に、あなた自身の手で自然の恵みを感じる苺作りにチャレンジしてみてください。